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食の安全コラム

提供:社団法人日本能率協会

2009/06/25更新

食中毒の未然防止のための日常衛生管理


気温や湿度が上昇する夏は、微生物や昆虫が発生・増殖しやすく、皆様も管理に気を使われる時期だと思います。そこで今回は、夏を迎えるにあたって、食中毒を防止するために衛生管理上気をつけるべきポイントをまとめてみました。

はじめに、食中毒の傾向を調べてみましょう。下のグラフは、厚生労働省ホームページに掲載されている「平成20年 食中毒発生事例」のデータをもとに作成したものです。食中毒の原因の大部分は病原微生物(細菌やウイルス)が占めており、夏は細菌によるものが多く発生していることがわかります。つまり、夏の食中毒対策のメインターゲットは細菌ということになります。ちなみに、冬に増えるウイルスはノロウイルス、秋に増える自然毒は毒きのこです。これらについては、対策強化を季節ごとに行うと、より効果が期待できると考えられます。

<平成20年 月別 原因別 食中毒発生件数推移>


食中毒予防のためによく用いられる標語が「つけない、ふやさない、やっつける」という「食中毒予防の3原則」です。これは、病原微生物の制御方法を簡潔に表したものと言えます。この3つの原則と一般的に行われている主な衛生関連作業とを関連付けた表を作ってみました。食中毒予防に関連した作業が多く、徹底して実施する必要があることがよくわかると思います。

病原微生物を
「つけない」
・作業者が健康である(下痢などしていない)ことを、検便も含めて確認する。
・手指に傷がないことを確認する。
・手指を洗浄消毒する。手袋をする。
・マスク、帽子、清潔な作業着を着用する。
・食品に触れる器具・機械などを洗浄消毒する。
・ネズミや虫などが施設に侵入しないように管理する。
・使用する水が微生物汚染されないよう、管理する(遊離残留塩素濃度の管理など)。
・清潔に管理された鮮度の良い原材料を使用する。
・加熱前、加熱後の食品が接触しないようにする(保管・作業場所、容器、使用器具
 などを分けて交差汚染を防ぐ)。特に生の肉や魚を取り扱う場合は注意する。
・できるだけ製品がむき出しになる部分を減らし、予期しない汚染を防ぐ。
病原微生物を
「ふやさない」
・食品ごとに決められた保存温度を維持する(冷蔵庫、冷凍庫などの温度管理をする)。
・加熱した食品は、可能な限り早く冷却する(小分けするなどの工夫も必要)。
・原料・半製品・製品は可能な限り早く使い切る(滞留させない)。
病原微生物を
「やっつける」
・加熱により殺菌する場合は、殺菌に必要な温度・時間を確認したうえで、それを守って
 加熱する。

この「当然やっている」内容は、実際には、機械による自動化ができない部分が多いこともあり、不徹底やミスが起こりやすいのです。さらに繁忙期ともなると、清掃・洗浄・殺菌がおろそかになることもあり得ます。従業員に作業の重要性と正しい手順を教育し、作業頻度を決めて確実に実施し、記録に残すことが重要です。

また、作業の出来ばえや製品中の菌数について「これで良しとする基準」を決めた上で、「本当にきちんと実施しているか」、「実施した結果、期待したとおりの効果が出ているか」、「そもそも使用している測定器(温度計など)や測定方法は正確か」などを確認することで、次に打つべき手が見えてきます。

さらに、制御すべき病原微生物を絞り込んでおくと、効率的に管理することが可能になります。絞り込みの参考になるのが、食品安全委員会や厚生労働省ホームページなどに載っている、病原微生物ごとに注意すべき食品や予防策などの情報です。こうした情報と、原材料、製品の特徴や製造方法、保存方法、食べ方(生食など)などから、制御すべき病原微生物を絞り込みます。そして、その殺菌条件や弱点などのデータを調べれば、必要な管理ポイント(例:加熱)と管理基準(例:加熱温度・時間)をはっきりさせることができます。(ちなみに、これがHACCPによる管理の考え方です。)

ところで、夏に細菌による食中毒が多発するのは、多くの病原細菌が夏の気温(30〜40℃)でよく発育するためです。ですから、要冷蔵品・要冷凍品を扱う作業場や保存場所の温度がそのような温度帯になる場合は、時間を追うごとに製品温度が上がり、食中毒の危険性がどんどん高くなります。
「加熱で殺菌できるから大丈夫」と安心するのは危険です。細菌によっては、耐熱性の毒素をつくるもの(黄色ブドウ球菌など)や、耐熱性の「芽胞」をつくり生き残ることができるもの(ウェルシュ菌など)があるからです。食中毒を予防するには、まず、病原微生物を「つけない」こと、そして危険な温度帯での食品の滞留時間を短くすることが大切なのです。

とはいえ、落雷などによる停電や故障、事故により製造ラインや冷蔵・冷凍庫が停止する可能性もあります。このようなリスクに備えて、以下のような準備と訓練をしておくことが大切です。
(1)発生する可能性がある緊急事態や事故はどのようなものか、予測する。
(2)予防できるもの(設備機器の故障や能力不足など)については、発生を防止する手段を決めて実施
   する。
(3)発生した場合の(製品回収も含めた)対応方法、体制、復旧手順を決めておく。
(4)原料・半製品・製品の使用可否の判断基準と、正常品との識別方法を決めておく。
また、万が一緊急事態が発生してしまった場合には、後日、それまでの準備対策に問題がなかったかを再検討し、改善しておくと、次に発生した時の対応がスムーズになります。

以上、食中毒防止の観点でまとめてきましたが、これらの考え方や手法は、食品の腐敗・変敗防止などにも応用できます。皆様の業態や扱う食品にあわせてご活用ください。


執筆者プロフィール

宇野  由華

社団法人日本能率協会  |  審査登録センター  システム審査部  専任審査員

◆経歴
東北大学 農学部卒業後、食品メーカーにて・・・続きを読む

本コラムは、社団法人日本能率協会より提供いただいております。

■社団法人  日本能率協会  プロフィール
経営革新の推進機関として60有余年。能率を「あらゆる経営資源のもつ能力と特性を最大化すること」として捉え、時代に先駆けるマネジメント技術の開発、人材の育成・強化などのサポートはじめ新たな課題解決にもお応えしています。

 
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