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食の安全コラム

 

2012/01/26更新

放射能検査の実態5 〜放射性物質の影響はいつまで続くのか

 これまで4回に渡って放射能検査に必要な基礎知識や検査の実態などをお伝えしてきましたが、放射能をテーマにした内容は今回で最後となります。そこで、今回は放射能関連の最新情報と今後のお話をしたいと思います。

2012年4月をめどに暫定規制値を厳しく見直し

 すでにご存知の方も多いと思いますが、現在、厚生労働省で食品の暫定規制値を厳しく見直す作業が始まっています。原発事故直後に設定された現在の暫定規制値は、年間被ばく線量(正確には実効線量)の上限を「5ミリシーベルト」以下と決め、さまざまな食物を食べたときの合計値がこの5ミリシーベルト以下を越えないよう、食品群(「飲料水」「牛乳」「野菜」「穀類」「肉・卵・魚」など)ごとに食品の規制値を算定していました。

 しかし、年間5ミリシーベルトはあくまでも非常時の対応です。より一層、食品の安全と安心を確保するため見直しが行われ、2012年4月を目途に(一定の経過措置を設けた上で)、年間被ばく線量の上限を「1ミリシーベルト」以下に引き下げることを基本として、新基準の検討が進められています。これに伴い、当然食品群ごとの規制値が下がることが予想され、大きな注目を集めています。また、今回の見直しでは規制値そのものはもちろんですが、年齢別の規制や食品群への「乳児用食品」の追加など新たな議論も起こっています(2012年1月現在)。暫定規制値の見直しに関する最新資料は下記にありますので、ぜひご参照ください。

厚生労働省(食品衛生分科会放射性物質対策部会参照)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcs.html#shingi54

除染しない限り、安全な生活は戻ってこない

 今回の見直しでは消費者にとっては食の安全が強化される一方で、食品関連企業にとってはさらに細やかな対応が求められることになるでしょう。すでに原発事故から10ヶ月以上経っており、いつまで放射性物質の影響は続くのか……と思われている方も多いと思います。これまでもお話してきましたが、放射性物質は崩壊(壊変)して、安定な物質(同位体)になるまでなくなることはありません。なくなるまでにどのくらいの時間がかかるかは核種ごとに決まっており、放射性物質の時間的な影響をはかる目安としては、「半減期」があげられます(詳細は連載第2回を参照)。

 今回放出された放射性物質の中でも特にセシウム137は、半減期が30年と長く、ほとんど消滅するまで300年かかります。しかも、セシウム137は化学的にカリウムと類似し、土壌粒子と結合しやすいため、放置すると長い間地表から流されません。その間に地面から放射線を放ち続け、農作物にも取り込まれて、長期汚染の原因になります。

 このようになくなることがない放射性物質は、除染がとても重要になります。除染と言っても消滅させることはできませんので、洗い流して、集めて、核廃棄物のように隔離する(地中に埋める)しかありません。どこに持っていくのか、どこの地中に埋めるのか、予算の確保はどうするのかなど、これから議論しなければいけないことはたくさんあります。

 おそらく除染は気の遠くなるような作業になるはずです。それでも、積極的に除染しない限り、人が安心して住める環境は戻ってこないのです。またその一方で、何年もの作業の結果すべて汚染が除去されるまでは、放射能の監視を緩めることもできません。除染が終わるまでは、放射能によるスキャンダルがいつ起こってもおかしくないからです。

後世への教訓として正しく伝える

 今回の原発事故では大勢の人たちが故郷を離れて避難させられました。経済的にも、精神的にも大きな犠牲を強いています。そして、現在ももっと多くの人たちの生活を脅かしています。私たちはこの重大事を後世への教訓として正しく伝え、多くの犠牲のうえに次世代の原子力安全やエネルギーの政策がより良い方向に導かなければなりません。その意味でも、本稿が少しでも多くの人に生活の安全、食の安全について考えるきっかけを提供できれば幸いです。

 最後に、この度の東日本大震災、福島原子力発電所事故により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。そしてなによりも被災地の一日も早い復興を心よりお祈り致します。

※次回からは食中毒や微生物など衛生をテーマにしたコラムをご紹介いたします。

執筆者プロフィール

藤巻 成彦(ふじまき しげひこ)

SGSジャパン株式会社  コンシューマー・テスティング・サービス部
試験所センター長

◆経歴
東京工業大学大学院を修了後、大手電気メーカーにおいて・・・続きを読む

■SGSジャパン株式会社  プロフィール
1878年に設立されたSGS(Société Générale de Surveillance)グループは、約64,000名の従業員とともに、1,250以上の事務所と試験所を世界中に擁する最大規模の検査、審査登録機関です。SGSジャパン株式会社はSGSグループの日本法人です。

 

執筆会社プロフィール

SGSジャパン株式会社
1878年に設立されたSGS(Société Générale de Surveillance)グループは、約64,000名の従業員とともに、1,250以上の事務所と試験所を世界中に擁する最大規模の検査、審査登録機関です。SGSジャパン株式会社はSGSグループの日本法人です。
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